農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業 先端農業連携創造機構

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連携プロジェクト詳細

26年度採択

熱線吸収フィルムを活用したイチゴ栽培技術確立プロジェクトチーム

熱線吸収フィルム被覆によるイチゴ生産の安定と生産者の収益向上をもたらす技術の確立

農業界代表:川原初一
経済界代表:ヤンマー株式会社

コンソーシアム形成の経緯

 長崎県で現在作付を推進している「ゆめのか」という品種のイチゴは、長崎で栽培されている主要品種である「さちのか」よりも、普通ポット育苗による促成栽培における第1花房の花芽分化(果実となる花の基ができること)が遅い傾向にあるため、収穫開始時期が遅れることから、単価が高い年内の収量が確保できないことが、イチゴ農家の課題となっています。花芽分花を促進させるには、夏の育苗期におけるハウス内の気温を下げる必要があります。気温を下げる方法には、遮光資材でハウスを覆ったり、空調設備を使ったりする方法がありますが、従来の遮光資材の被覆では、熱の他に植物の光合成に必要な光も反射・吸収してしまい、充実した苗を育成することが難しくなります。また、空調設備の利用は施設導入コストや冷蔵施設の利用におけるキャパシティの限界などの課題があります。
 
 一方、ヤンマー社では、農作物の夏場の暑さ対策として、高性能ウインドウフィルム製品の開発販売を事業とするパナックアドバンス社と、温度抑制効果を持ちながら光合成に必要な光を確保できる高機能フィルム作成に関する共同研究開発がスタートしていました。
研究を進めていく中で、長崎県より、熱線吸収フィルム(N.I.R吸収フィルム)がイチゴ農家の抱える課題を解決する可能性を秘めていることを聞いたのです。
長崎におけるイチゴ栽培の課題を解決すべく、ヤンマーは早速、県内でイチゴ栽培を営む農業者、長崎県農林技術開発センターと共に熱線吸収フィルムを活用したプロジェクトを立ち上げ、先端モデル農業確立実証事業に参画することになりました。

プロジェクトにかける想い
昇温抑制効果を持ちつつ光合成に必要な光は透過させるという熱線吸収フィルムの機能は、他地域の別品種のイチゴのみでなく、例えば夏野菜の栽培にも応用して出荷時期をずらし、市場価格の高い時期に出荷できるようにするなど、ユーザーのアイデア次第でさまざまな使い道が考えられ、農業者全体の収益向上の助けになることが期待できます。まずは現在実証中のイチゴ栽培を第一歩として、将来の日本の農業全体に役立つような技術の実証ができればと考えています。


技術

 熱線吸収フィルム(N.I.R吸収フィルム)を通常のビニールのかわりにハウスに張ることで、植物が光合成に必要な光(光合成有効光量子束密度)を透過る一方で、ハウス内の温度上昇を引き起こす近赤外光を吸収して、温度上昇を抑制することができます。
このフィルムの特性を活用することで、様々な面でのメリットが期待されています。
 まず、育苗期にN.I.R.吸収フィルムを使用することにより頂花房の花芽分花を促進させて、イチゴの高単価期である11月下旬に、収穫開始時期を前進化させることができます。さらに、苗の定植後もフィルムを引き続き使用することで、気温を低く保つことで第2花房の花芽分花を促進することが期待できます。これにより頂花房からできる果実の収穫と、次にできる果実の収穫の間に中休みが生じることを防止し、連続的な収穫が期待できます。また日中のハウス内の気温上昇が抑えられるため、無換気状態が長く保たれ、積極的にCO2を施用することで、増収効果も期待できます。
 3月下旬以降には、気温上昇による果実の軟化による品質低下を防ぐことが期待できます。さらには、昇温抑制効果を活かして収穫期間を延長することによる農家所得の向上も見込まれています。
なお、今年度の実証過程では、育苗期における頂花房の花芽分化は、通常フィルム使用の苗に比べ12日早かったという効果が出ています。これは収穫開始時期を20日程度早めることに相当します。

[更新]

将来展望

 本プロジェクトによる、「ゆめのか」の収穫開始時期の前進化や品質・収量向上等により見込まれる収益増加は、作付面積10アール当たり65万円を想定しています。長崎県のイチゴ栽培面積284ヘクタールの20%に当技術が導入されるとすると、その経済効果は年間3億7千万円に及ぶと算定されます。
加えて、定植時期を分散させることが可能になることから定植、収穫・パック詰め作業などの労力削減やリレー収穫による定量出荷という効果もあり、生産者にとっては大きなメリットになるといえます。

事業二年度目

事業二年度目の状況

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 平成26年度の実証では、春以降の気温上昇によりイチゴが軟化し、通常であれば5月中旬以降で収穫・出荷が終了するところを、熱線吸収フィルムの使用によりハウス内の気温を下げることで、6月中旬まで収穫時期を延長させることができました。
 また、年内のイチゴ収穫時期の早進化に関しては、フィルムを時期に応じて被覆・巻き上げが可能な構造とし、熱線のカットが必要な期間のみフィルムの効果が発揮される工夫を行い、適切なフィルム被覆のタイミング・期間について実証を継続しています。
 作物に対する効果とは別の副次的な効果として、熱線のカットにより、夏場の作業者のハウス内作業環境を向上させる効果もあり、労働力の確保にもつなげることができると期待されています。

 イチゴの栽培への熱線吸収フィルムの導入については、フィルム巻き上げのタイミングを検討する必要があるため、各県単位で一度実証を行ってもらい、農業指導員等の協力を仰ぐ必要があると考えています。
 実証実験の範囲外とはなりますが、同じフィルムを夏場のほうれん草での栽培に使用したところ、対照圃場に比べ発芽率・生育具合がかなり向上したという結果が出ました。葉物野菜などであれば、暑い時期にフィルムを常に張っておけばよいため、使用に関して特別な技術は不要であり、イチゴ以外の作物についても幅広い普及可能性があると考えられます。

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